本学会は地すべり及びこれに関連する諸現象並びにその災害防止対策に関する調査・研究・受託および助成を行っています。

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学会長挨拶

日本地すべり学会の魅力的な活動の必要性
- The need for attractive activities of the Japan Landslide Society -

公益社団法人日本地すべり学会会長
信州大学学術研究院農学系教授/平松 晋也

日本地すべり学会会長 平松 晋也

 令和2年6月12日に開催された令和2年度第2回理事会において,令和2・3年度の会長として任命されました信州大学の平松です。このような重責を仰せつかるとは想像すらしていなかったため,戸惑いは否めないものの,身の引き締まる思いです。
歴代の会長を中心として,60年近くの長きにわたり積み上げてこられた数多くの成果と実績を踏まえ, (公社)日本地すべり学会の発展と安全・安心な地域社会の実現に向けて,微力ではありますが全力を尽くす所存です。
ご承知の通り,学会活動は会員の皆様のご協力とご支援なくしては成り立ちません。今後とも,会員皆様方のご支援とご指導を賜りますようお願い申し上げます。

 不測の事態に対する対応の強化
  新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)第32条第1項の規定に基づいて出された新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が,5月14日に解除されました。会員の皆様をはじめとして地域の皆様方も,ようやく明るく元気な日常生活を取り戻して頂いているのではないかと思います。

 しかしながら,新型コロナウイルスの猛威は完全に消滅したわけではなく,当面はその動向を注視する必要があります。新型コロナウイルスの猛威は,(公社)日本地すべり学会の活動にも影響を及ぼし,令和2年度の通常社員総会は規模の縮小を余儀なくされ,例年総会後に開催していたシンポジウム「地すべりと地質 ―地質学で地すべりを解剖する―」は,参加者の安全の確保が難しいと判断し,残念ながら中止せざるを得なくなってしまいました。さらに,9月16~18日に開催予定であった第59回(2020年度)研究発表会および現地見学会(開催地:山梨県甲府市)についても,6月12日に開催された理事会でその中止が決定しました。

 このような事態は,(公社)日本地すべり学会の長い歴史の中でも初めての事であり,今後は,新型コロナウイルスのみならず未知の感染症や大規模災害などの不測の事態に備えるため,生活様式は言うに及ばず,新たな学会活動の形態や様式が求められるようになると思います。今回の新型コロナウイルスの影響を教訓として,不測の事態に対する学会としての対応策を模索すべき時期にきているのではないかと思っています。



 (公社)日本地すべり学会に対する国民の期待
  さて,近年の我が国で発生した土砂災害を振り返ると,昭和57年7月に長崎市を中心とした地域に発生した集中豪雨による長崎水害,鹿児島地方を襲った平成5年8月豪雨,平成7年1月に発生した兵庫県南部地震をはじめとし,平成11年6月の広島豪雨災害,平成16年10月の新潟県中越地方を震源とする新潟県中越地震と台風第23号による土砂災害,平成23年台風第12号による紀伊半島豪雨災害,兵庫県丹波市や広島県広島市に大規模な土砂災害をもたらした平成26年8月豪雨,平成28年4月熊本地震,平成29年7月九州北部豪雨など枚挙に暇がありません。

 特に,平成30年には7月の西日本豪雨や9月に発生した北海道胆振東部地震などにより同時多発的に甚大な被害が発生し,年間土砂災害発生件数は3,459件にものぼり,土砂災害による死者・行方不明者・負傷者数は278名にも達しました。

 近年,地球温暖化などによる影響を受けて,一雨の降雨規模が増加する傾向にあり,それに伴って土砂災害の発生件数や規模も年々増加する傾向がみられます。全国のアメダス1,300地点で50mm/hr以上を記録した大規模降雨の年間発生回数は増加傾向にあり,近年での大規模降雨の頻発にともない,斜面災害などの土砂災害も増加傾向を示すようになってきました。

 (公社)日本地すべり学会の目的は,「地すべり等の斜面変動及びこれに関連する諸現象の研究ならびに当該現象に起因する災害の防止対策に関する学術的,総合的な調査研究に関する事業を行い,その成果を広く内外に公表することによって,科学技術の振興とより安全な地域環境の実現を目指し,国民福祉の向上に寄与する」ことにあります。ご承知のように本学会は,地球科学・農学・工学などの自然科学分野は言うに及ばず,警戒避難や防災教育などの社会科学分野にまで及ぶ幅広い専門分野の研究者や技術者で構成されています。このような本学会の特徴や近年の土砂災害の状況を勘案すると,本学会に対する国民の期待は年々大きくなっていると言えるでしょう。

 さらに,この問題は,我が国国内のみにとどまらず,地球規模での気候環境変化が顕在化している現状を勘案すると,本学会が,国際的な斜面災害軽減への取り組みをはじめとして,諸外国への斜面防災技術の移転や協力において中心的な役割を果たすべき責任がますます大きくなっていることが容易に推察されます。また,公益社団法人の責務として,社会的に高い関心が向けられる土砂災害をはじめとする自然災害に対して,そのメカニズムなどの本質を的確に捉えた上で,対策計画や効果的な対策方法の方向性に関する助言や提案が,今後より一層求められるようになってくると思います。

 魅力ある学会作りの必要性
  近年の気候変動や異常気象,地震や火山活動の活発化等により土砂災害が激甚化,広域化しており,土砂災害への防災・減災に対する社会的ニーズが増々高まっている反面,産・官・学のいずれにおいても防災関連分野の人材が不足し,この傾向が年々強くなっているというのが現状です。防災分野の人材育成には長期間を要することになるため,人材が年々減少傾向を辿っているという事態に対し,(公社)日本地すべり学会として早急に対応策を講じる必要があります。

 本学会の正会員数は,1990年の2,630人をピークに2015年頃まで減少が続き,その後若干ながら増加に転じたものの,2019年現在の正会員数は1,443名とピーク時の約半数となっています。一方,正会員の平均年齢は,年々増加傾向にあるようです。この事実は,「若手技術者や研究者の本学会への新規入会は少ない」ということを意味していることになります。学会活動の活性化は若手技術者や研究者の参加なくしては達成できないと思います。今後,より一層魅力ある学会作りを行い,若年層獲得に向けた取り組みが必要になると思います。

 本学会では,会員数の減少を抑制することを目的として,2014年度より会員数検討対策WGを立ち上げ,様々な検討を行ってきました。このWGでの提案に基づいて,毎年支部単位で行われる講習会や現地検討会を通して,若手会員の技術力育成を支援して行く事業を実施してきました。

 残念ながら,この支援は,若手のための活動費を本部が支援し,具体的な活動内容は支部に任せるという形態をとっていました。防災関連の人材育成については,支部単独で独自の形態や方法で若手人財育成活動を実施するといった自由度を残しつつ,学会全体としてのかじ取りを強化し,目指すべき人材像を明確化することによりそれぞれの支部が同じ方向を向いて活動を実施していく必要があると思います。

 幸いにして本年度から,新たに若手会員数対策,学会活動アウトリーチ,特別プロジェクトを担当していただく理事が選出されました。今後は,これらを担当いただく方々を中心に,若手人材の確保と効果的な教育を実施すべく,(公社)日本地すべり学会としての中・長期的な対応策を考えていきたいと思います。

 斜面災害をはじめとする自然災害が増加傾向にあるのに反し,国土強靱化の支えともいえる防災関連技術者の人数が追いつかず,ましてや減少傾向にあるという事実には心が痛みます。防災関連分野の人材を輩出する根幹を担っているのは大学です。我が国の将来を託すことになる大学の若手研究者や学生に本学会に入会してもらい,特に若手の研究発表会での発表本数や学会誌への投稿数を増やすための方策について,従来より検討されてきた事項を整理するとともにこれを発展させ,具体的な方策を早急に打ち出す必要があると思います。

 先にも申しましたが,学会活動は会員の皆様のご協力とご支援なくしては成り立ちません。今後とも,会員の皆様の積極的な参加とご協力を戴くとともにお知恵を拝借し,会員の皆様に「(公社)日本地すべり学会の会員でよかったな」と思っていただけるような魅力ある学会作りを心がけ,様々な課題解決に向けて取り組んでいく所存です。今後とも,皆様方のご指導ご鞭撻をお願い申し上げます.