第16代会長 | 公益社団法人 日本地すべり学会

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第16代会長

日本地すべり学会の今後の発展に向けて

greeting_16th 平成26年6月20日に開催された平成26年度第2回理事会において、平成26, 27年度の会長を任命されました。 檜垣大助前会長を中心に蓄積された実績を踏まえ、日本地すべり学会の発展と科学技術の振興及び安全な地域社会の実現に向けて全力を尽くしたいと考えております。 会員皆様方のご支援とご指導を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

 日本地すべり学会は、昭和38年8月に地すべり総合研究会として発足して以来、半世紀がすぎました。その間、先人の方々の献身的な努力によって、 わが国の斜面防災分野は世界をリードしてきました。それは、当学会が国際的な災害軽減への取り組みの中で さまざまな協力を求められていることに表れています。一方、当学会は、地球科学・農学・工学など きわめて幅広い専門分野の会員で構成されていることが特徴です。 したがって、総合的な視点に立つ斜面の専門家という側面から地域や地球規模の環境問題解決に貢献していくことも重要です。 加えて、産官学各界の立場の違う会員、そして山間奥地から大都市圏まで各地で活動する会員で構成されることから、 地域や社会のさまざまなニーズ・実情を反映した学会活動を展開していく必要があります。

 ご存知のように、当学会は北海道・東北・新潟・関東・中部・関西・九州の各支部を持ち、理事会・代議員による総会での意思決定、 会長・副会長・専務理事と 総務部・事業計画部・研究調査部・編集出版部・国際部での事業企画・実施や、 事業・研究に関する委員会活動を行っています。 地すべりを取り扱うには、その地域性と歴史性を踏まえることが欠かせません。 このため、地域に地すべり専門家がいる支部活動は、学会活動を支えるほどに重要です。

 以上のような当学会の特徴を認識し、私なりに今後取り組むべき課題を取り上げてみました。皆様のご意見を頂ければ幸いです。

 まず、公益法人としての活動の活発化があげられます。再掲するまでもなく当学会の活動はきわめて公益性の高いもので、 行事で言えば、全国規模の研究発表大会だけでなく 支部主催の地すべり現地見学会・シンポジウム、地域での防災学習の取り組みなどを 積極的に行っていく必要があります。

 一方、地すべりは、地質や地形、地下水などが複雑に絡み合った土砂移動現象であるため、その動きも住宅の壁に少し亀裂が入るようなゆっくりしたものから、 目の前で土塊が落ちて行くような高速のものまで千差万別です。この複雑さが、時として現象の理解を難しくしたり、 対策に苦慮する原因にもなっています。地域防災力向上の必要性が叫ばれる今、一般の方々に地すべりを理解して頂き、 前兆をいち早く捉え、災害対応に繋げることは喫緊の課題です。そのためには地すべりを理解しやすく説明し情報を理解する力を養っていくことも必要です。 反面、複雑な現象を、現場を観察しながら少しづつ解明していくのは、まさに科学的アプローチと言えます。 このような自然を科学し地域の安全を守る、そして地すべり地に育まれた自然や文化を継承する、 このことは子供達にとっても夢のあることではないでしょうか。地すべり地を対象とした防災・環境教育あるいは理科・社会科教育といった切り口も考えられるかもしれません。

 近年豪雨時に多発する大規模な斜面崩壊の発生や地震により集中発生する地すべり災害の機構とその対策や 予知予測は重要な課題です。平成23年度まで3年間行われた当学会地震地すべり特別研究プロジェクトでは、 歴史時代まで含めた多数の地震に起因した地すべりの特徴が明らかにされ、その調査・解析手法も含め書籍として刊行されました。 この成果を受けて、当学会では地震による斜面変動危険個所の把握に関する手法開発に取り組んでいます。 このことは、来るべき巨大地震への対策として重要です。

 土砂災害にかかる防災行政予算の減少、高齢化社会、過疎で管理されない土地の増大、地球規模の気候変化など、 地すべり災害の懸念は、今後ますます高まっていく可能性があります。蓄積された智恵と技術を次世代に伝承し、 新たな技術や考え方を取り入れながら、斜面を科学し安全安心な社会を作るために、会員の皆様とともに頑張って行きたいと考えております。 皆様のご支援・指導を頂ければ幸いです。

(公社)日本地すべり学会会長
静岡大学農学研究科教授
土屋 智