第14代会長
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日本地すべり学会の発展に向けて
Towards the prospective future of the Japan Landslide Society
平成22年5月14日に開催された平成22年度第1回理事会において、平成22・23年度の会長として任命されました。丸井英明前会長を中心に前年度までに達成された実績を踏まえて、(社)日本地すべり学会のさらなる発展のために全力を尽くす覚悟です。皆様のご支援をお願い申し上げます。
学会の定款第3条に学会の目的が次のように定められています(学会ホームページをご参照ください)。
「本会は地すべり等の斜面変動及びこれに関連する諸現象とその災害防止対策に関する研究者並びに技術者相互の交流を図り、その有機的な連携のもとに学術的・総合的に調査研究を行い、その成果を広く内外に公表し、もって科学技術の振興とより安全な地域環境の実現を目指し、国民福祉の向上に寄与することを目的とする。」
この目的に賛同する個人や団体が構成員となり、本学会が成り立っています。従って、この目的を常に意識しながら、会員と社会のニーズを的確に把握して学会を運営して行くことが肝要であると考えています。
この文章は、会長就任後一カ月が経過した時点での私の率直な気持ちをまとめたものです。理事会、本部幹事会(会長,副会長,専務理事,総務部,事業計画部,研究調査部,編集出版部,国際部,北海道・東北・新潟・関東・中部・関西・九州の各支部、などから構成)の意向をまだ十分には反映しておりませんが、今後、皆様のご意見をお聞きしながら修正を加え、改善して行きたいと考えております。会員各位におかれましては、ご意見、ご要望がありましたら遠慮なく学会(ホームページに連絡先が書いてあります)へと伝えていただければ幸いです。
【会員への情報提供と会員相互の連携の強化】会員の意見や要望を聞くにあたって、事前に学会の情報を十分に会員へ伝えることが重要です。その努力をいたします。本学会の特徴として、公的研究機関・学校関係の研究者の数に比べて、建設コンサルタントを中心とした企業,国・地方公共団体の関連部署の職員が会員の多数を占めていることが挙げられます。このため、地すべり現場の情報が豊富で、産・官・学の連携がスムーズに行われています。この特徴をさらに活かして、会員相互の連携を強める必要があります。そのためには学会活動の情報や連携の情報を細やかに会員へ伝える工夫がますます必要です。
【公益社団法人への移行対応】日本地すべり学会は、近いうちに公益社団法人へと移行する予定です。新たな公益法人制度では、より厳格な学会運営が求められます。このため、これまでの学会の運営方法を一部修正・変更することが必要になります。この場合にも、前述の“学会の目的”と“会員中心の運営”を常に念頭に置いて進めて行く所存です。具体的な内容については、逐次、ホームページ・学会誌などを通じてお知らせします。
【学会財務の点検】学会の運営にあたっては、予算と決算の詳細な点検が欠かせません。厳しい財務状況の中で、効率的な予算立てと執行がこれまでなされてきました。今後、会員数の減少などにより一層厳しい運営が求められる可能性があります。このため新たな収入源の確保、予算項目の重点化、支出のさらなる効率化などを進める必要があります。可能であれば10年間は財務が安定するような計画を思案してみたいと考えています。 会員減少を抑える対策として、若手会員が学会に魅力を感じられるような工夫、退職者に引き続き学会への支援をお願いするためのシルバー会員制度などを検討したいと思います。
【学会が先導する新たな研究テーマの発掘】平成21年2月に“地震地すべりプロジェクト”が学会の委員会として発足しました。これは8つの分科会を持ち、委員数が100名を超える大きなプロジェクト委員会です。現在、学会としての提言案の作成、総括報告書の取りまとめ、が進んでおります。平成23年度中には、全体報告書,成果報告会,さらには国際会議の開催へと展開する予定です。会員皆様のご支援を切にお願いする次第です。本プロジェクトが設立した背景を考えてみますと、会員による長い期間にわたる関連研究の国内外での活発な活動、2004年10月に発生した中越地震およびそれ以降に発生した地震地すべり災害に対する先導的な研究活動などがあってのことであると痛感しております。地震地すべりプロジェクトは平成23年3月に終了する予定ですが、それに続く新たなプロジェクトの創設を模索したいと思います。国内外において研究を先導することが可能であり、もって斜面災害軽減に資する取り組みを推進できるような新規プロジェクトを創設するために皆様の積極的なご提案を歓迎いたします。
【国際化の進展】国際活動については、海外で発生した多くの地すべり災害に対する調査活動,当学会主導の国際会議の開催,パキスタン政府機関との共同研究の実施,中国甘粛省との研究交流協定の締結、などがなされてきましたが、さらに国際化を推進する必要があります。学会からの予算の裏付けが少ないため、国際活動は一部の会員によって担われているのが現状です。日本全体の国際化が一層求められている現在、社会への貢献を視野に入れながら国際活動を進めて行く必要があると考えています。国際会員数の増加,学会主催の国際会議の開催,関連国際機関との密な連携、などが今後の課題であると思われます。
以上のように、学会を健全かつ発展的に運営するにあたって、多くの課題が山積しておりますが、解決に向け腰をすえて取り組んでいく所存です。
学会の大きな役割の一つは、地すべり関連の研究活動や業務を側面から支援することにあります。地すべり現象の解明と災害防止対策の提案・実施を通じて、皆様とともに社会貢献を果たして行きたいと考えております。皆様のご指導・ご鞭撻をお願い申し上げます。
社団法人日本地すべり学会会長
群馬大学大学院工学研究科教授
鵜飼 恵三