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掲載日:2011年8月 1日
支部長挨拶:東日本大震災からの復旧・復興と東北の斜面防災
延長約500kmに及ぶ断層破壊面、三陸の湾奥で40mの高さまで達した巨大津波そして平成23年6月下旬現在の死者・行方不明者数2万4千人―戦後最悪の災害となっている東日本大震災の発生から4ヶ月近くが経ちます。不幸にして犠牲となられた方々へ心からお悔やみ申し上げますとともに、夏を迎え依然厳しい状況で避難あるいは生活再建を進められている多くの方々にお見舞い申し上げます。
当学会東北支部でも多くの方々が被災しました。家屋の流出した親戚を持つ方、散乱した家具や資料・長期間のライフラインストップの中で、家族の無事確認もそこそこに災害実態の把握・復旧への対応そして復興の検討に支部に皆様が邁進されていることに、東北地方の一市民として心より感謝申し上げます。さらに、このような状況で平成22年度支部だより発行が遅れたことをお詫び致します。
我が国、特に東北地方は、復興へ向けて防災・エネルギー・経済・環境など総合的に考えなければならない大きな転換点に立っています。1,100年前の貞観の巨大津波のような過去の事例も考慮し、ハードでカバーできない部分は避難や防災教育・備蓄などで対応するという巨大災害への対応のあり方が、2011年6月の中央防災会議でも示されました。そして、人命を守ることとともに、例えば、漁業者の生業再スタートや、津波を被ったり地盤が下がったりした農地の復旧、斜面変状の生じた丘陵宅地での居住の問題など、早急な生活再建が求められています。しかも、我が国の経済状況の決して良くない現状でそれをしなければならないのです。
一方で、明るいニュースとして、岩手県平泉の世界文化遺産への指定が決まったことが挙げられます。2008年岩手・宮城内陸地震の発生から3年、岩手県南部や宮城県北部の激甚被災した地域では、これを契機に歴史・文化や自然を核にした観光復興が進むことが期待されます。巨大な地すべり発生箇所も取り込んだジオパーク構想なども実現への追い風となるでしょう。この地域は3年間で内陸直下型・海溝型の2大地震を経験した特異な地域となったのです。
そこで、改めて、斜面防災の面で東北支部がすべきことを考えてみます。まず第1に、復旧のための斜面安全確保は言うまでも無くなされるべきことです。第2に、各地域の復興計画の中で、斜面安全性の面から提言することです。その際、斜面の安全だけを図るのではなく、住宅地に近い所では避難路の確保や平常時の環境・アメニテイ機能も持たせた総合的な斜面づくりが必要です。第3に、災害に学ぶことー防災教育の推進です。地すべり跡地は数百年もすれば森に覆われ、地元の伝承にしか残らないものとなるかもしれません。積極的に斜面災害の現象や原因、そして対策工・監視手法なども含めて解説する手段を講ずること(看板や冊子、ガイド)も必要でしょう。そしてもう1つ、巨大災害に対する対策の基本的な考え方の再構築です。斜面では、滑落を起こすような地すべりと徐動性の滑りでは、地表地物・人間に与える被害は大きく異なります。どんな現象を想定し何をどのように保全するのか、性能設計の視点に立った対策の考え方を取り入れるべきと考えます。また、1978年宮城県沖地震や岩手・宮城内陸地震などと今回の地震での斜面変動発生の差異や共通性の把握・分析も課せられた研究課題です。
悪夢を未来への夢に変え実現へ少しでも進めるー歴史の一頁は今、我々が作っているという気持ちで支部の皆さま、頑張って参りましょう。
(社)日本地すべり学会東北支部長 檜垣大助 (弘前大学農学生命科学部教授)